今回は、大野さんが考える「良い美容師」の条件についてお伺いします。大野さんがお客さまに接するときにいつも心がけていることとは…?
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年齢を重ねるお客さまに寄り添い、伴走したい
――大野さんが目指す理想の美容師とは?
僕、ZACCの就職面接で「日本一の美容師になります!」って言ってしまったんですね(笑)。当時はなんかデカいことを言えばいいかなって思っただけだったんですけど。
でもそれからずっと「日本一」ってなんだろうっていうのが頭にぼんやりあったんです。日本一の美容師なんて、誰がどうやって決めるんだろうって。

(※ 画像はイメージです)
それで、美容師を25年やってきて、とりあえず今のこたえとしては、やっぱり長いお付き合いができるお客さまを増やすっていうことだと思ってるんです。シンプルだけど、ほんとにそれだけなんです。
いま、ありがたいことに美容師になりたての頃からずっと来てくださっているお客さまも多いですし、当時は中学生だった子が成人して子供を産んで、その子供たちがまた成人式を迎えてヘアメイクの依頼を受けるっていうケースもあります。
それが、自然で理想的な流れだと思ってるんです。目標としてたことはこれだなって。

――お客さまも年齢を重ねていくと、ご要望の内容に変化が出てきますか?
そうですね。単にトレンドの変化に対応することに限らず、大人になるにつれて髪質も変わってくるので、癖が出てきてびっくりするとか。
年齢を重ねていくと、髪型や髪の毛に対しての意識が変わるときがあるんです。若い頃は髪型だけを意識していたのが、だんだん身体の一部として考える時期に入ってくる。
美容師としては、その瞬間を事前に捉えて見逃さず、そのときどきで適切なアドバイスできるように意識してます。
カウンセリングはあえてしない。お客さまの悩みにこちらで気がつくことも美容師の仕事

――それは、カウンセリングするなかで見つけていくものなんですか?
いえ、僕はカウンセリングってほとんどしないんですよ。整体とかに行くと、何も言わなくても即座にこっちの悩みに気づいて適切なツボ押してくれたりするじゃないですか。あれが理想だと思ってて。
たとえば、お客さまが希望の髪型を写真で見せてくださったとして、その髪型をそのまま再現しようとしても全く的を射ていないと思っています。
要は、お客さまがその写真の何を見て、どうしたいのか、何に悩んでいるのかっていうところを探らないと、お客さまの願いを叶えることはできないですよね。もしかしたら髪型じゃないかもしれない。モデルさんの顔型かもしれないし、表情かもしれないし、雰囲気かもしれない。
それって、カットをどうする、カラーをどうする、パーマをどうするとかっていう単純なことでは解決しないんです。お客さまが求めているのは必ずしもそこじゃないので。

――すると、どうやってお客さまの理想像に近づけるんですか?
基本となる切り方なんかは教科書に書いてありますよね。美容師は全員、一定の教育を受けていますし、お店の独自のマニュアルみたいなものもあります。
ただ、どんな仕事でも同じだと思いますけど、そこから先の想像力こそが重要になってくると思っているんです。いかに寄り添えるか、ですかね。マニュアル通りに左右対称に切ったからといって、お客さまが喜んでくださるわけではないですよね。
お客さまがどんなコンプレックスを抱えておられるのか、何を解消してもらいたいがために僕のところへ来てくださっているのかをちゃんと見極めて応えていかないと意味がないと思っています。

――いまでもお客さまに施術する中で悩むことはありますか?
もちろんです。いまだに毎日悩んでますよ。お客さまの願いを叶えられなかったんじゃないか、本当に満足していただけただろうかって、日々、反省ばっかりです。
この仕事には終わりがないので、どうしたらお客さまに喜んでもらえるのか、これは永遠のテーマです。だからこそ取り組む価値があると思っています。
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次回はいよいよ、大野さんがおすすめする大人髪のスタイルや、セルフケアのやり方についてお伺いします。お楽しみに!
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